KARTE Blocksと認知科学で実現する、「心を動かす」LPOのPDCAサイクルとは@KARTE CX Conference 2022【イベント登壇レポート】
こんにちは! 企業向けにデジタルマーケティングの支援を行う、株式会社プレシジョンマーケティングです。
先日、当社クリエイティブディレクターの城下が、顧客理解ツール「KARTE」が主催するイベント・KARTE CX Conference 2022に登壇しました。本記事では、イベントでお話した内容をダイジェスト版でお届けします。
KARTE公式YouTubeチャンネルから、アーカイブ動画もご覧いただけます。
登壇テーマは、「LPO」「認知科学理論を応用したデザイン設計」「クリエイティブの客観的・定量的評価」
当日は、“KARTE Blocksと認知科学で実現する、「心を動かす」LPOのPDCAサイクルとは”というタイトルのもと、KARTEを運営するプレイド社の大塚さんとのセッション形式でお話しました。
2021年9月にリリースされたばかりの「KARTE Blocks」は、Webサイトをノーコードで更新・評価・改善できるツール。このツールを使えば、コーダー不在でWebサイトを編集できます。サイト改善作業を外注せず内製で対応できるため、広告に合わせてLPのファーストビュー画像だけを差し替えたり、複数のクリエイティブでABテストを行ったりといった運用業務がスピーディーになります。
とはいえ、さまざまな戦略を手軽に試せるからといって、やみくもな運用は避けたいもの。そこで本セッションでは、ユーザー心理に関する様々なライセンスを持ち、クリエイティブディレクターとして15年のキャリアを持つ城下から、科学的かつ効率的で最適な戦略にたどり着くためのメソッドをご紹介しました。
「心を動かす」ための武器は、認知科学
城下が設計したメソッドの基礎には、人間が持つ情報処理の仕組みを紐解く学問である認知科学があります。情報処理の仕組みとは、伝えられた情報をどう理解するかということです。と言われてもピンと来づらいかと思いますので、セッションでは簡単なテストを2つ行い、、伝え方が変わることで理解も変わってしまう現象の体験を実施しました。
こちらの動画でご覧いただいたほうが分かりやすいので、お時間ある方はぜひ以下から再生してみてください。すぐに1つ目のテストが始まるようセットしています。13:08ごろまでが該当箇所です。
テキストでも、1つ目のテストだけご紹介しておきます。
テスト.1
次の文字列を10秒間で覚えてください。
おそらく、多くの方はすべて覚えきれなかったはずです。
一方、次の文字列はいかがでしょうか?
今度は覚えられた方が多いはずです。実際、セッション相手の大塚さんは見事に正解されました。
2つの文字列は、どちらも16文字で、含まれる文字の種類も数も同じです。単に並び替えただけなのに、記憶定着率に大きな差が生まれたのはなぜでしょうか? それは、後者の文字列は「SMAP」「WIFI」「KDDI」「HTML」と、既知の単語に分解できるからです。つまり、ランダムな16文字は覚えられないけれど、4文字の単語4つは覚えられたわけです。
実はこのテストは、人が瞬時に記憶できる情報の最大数は「7±2」の範囲内に収まるという知的システム「マジックナンバー」を下敷きにしたものです。これを知っていることで、より相手に伝わりやすいコピーやビジュアルを考える助けになります。
認知科学には、マジックナンバーのほかにも「伝え方と理解のし方の関係」を紐解いた知見が多数あります。それらを効果的に使うことでタイトルにもある通り「(ユーザーの)心を動か」し、LPの効果を最大化しようというのが私たちの考え方です。
「動機づけ」の鍵は、安心と満足の両立
プレシジョンマーケティングでは、以下の図のように、認知科学モデルをマーケティングに活用するための手法を複数確立しており、クライアントの目的に合った手法を組み合わせて提供しています。セッションでは、赤枠で囲った「動機づけ設計モデル:行動心理学に基づいたモチベーション設計」を取り上げて、LPO制作への活用法を具体的にご紹介しました。
購入動機をつくる、入会動機をつくる、問い合わせ動機をつくる……。マーケティングにおいて「モチベーション(動機づけ)」は極めて重要です。心理学では、モチベーションは強度・持続性・方向性が揃うことで高まるとされています。
この3つを設計するための手法として、プレシジョンマーケティングでは、ハーズバーグという学者が提唱したニ要因理論というものを用います。これは満足か不満かを軸に、対象の欲求を相対化しようという考え方です。シンプルがゆえに使い勝手が良く、それでいて奥が深い理論です。
余談ですが、「欲求」というとマズローの欲求5階層を使った戦略論をたまに見かけます。しかし、欲求5階層はビジネスの文脈には当てはめにくいため、私たちは使いません。
ハーズバーグはニ要因理論を唱える際、『満足』の反対は『不満』ではないことを強調しました。その代わりに、次のような定義をしました。
これを図解してみると、以下の図のようになります。これはつまり、不満を解消しても満足にはつながらない、あるいは、ある部分の満足度を高めても不満は不満として残り続けるということであり、どちらか一方では動機づけは成立しないということを意味します。
動機づけを行うには、不満の解消と満足の充足を同時に行う必要があるというわけです。
さらに、満足の土台には安心が必要です。安心とは、あって当たり前、ないと不安になるもの。つまり±0の状態です。これだけでは動機として弱いので、あるとうれしい+α、つまり満足を設計する必要があるのです。
こうした考え方をもとに、プレシジョンマーケティングが考案した動機づけ設計モデルが、以下の図です。
USP(Unique Selling Proposition)、つまり製品品質やブランド力を担保することで、安心を与える。ESP(Emotional Selling Proposition)、つまり顧客が求める方向性に寄り添うことで、満足を与える。この両輪が満たされてはじめて、顧客をコンバージョンに向かわせる動機が生まれるのです。
実際の広告やLPにはどう活きるのか?
最後に、プレシジョンマーケティングが実際につくった広告やLPのクリエイティブの改善例をお見せしながら、動機づけ設計モデルを用いた活用法をご紹介しました。
下図は、キッチン用品を扱うブランドの広告のサンプルです。
左は改善前。ロゴでブランドを、「おしゃれなキッチン用品」という言葉で成分・性能をそれぞれ訴求していますが、いずれも安心寄りの訴求で、満足を高める働かきかけが弱いように見受けられます。
それを改善したのが右です。ロゴや成分・性能表示はそのまま残しつつ、メインコピーを「こころも一緒に料理しよう!」に、CTRボタン文言を「“お気に入り”を探す」にそれぞれ情緒的な訴求力を強化。安心と満足、両方を満たすように調整しました。
下図はサプリメント商品のLPサンプルです。
先ほどと同じく、左が改善前。こちらはもともと安心と満足の両方の要素が入っていましたが、より満足を高めることを意識しました。商品名の上にサブコピーを追加して訴求要素を足したり、No1バッジを医師の写真に変更して安心と満足を同時訴求するなどの調整を実施。もともと、安心要素3+満足要素2だったものを、安心要素3+満足要素4にすることで、訴求力を強化しました、
このように、クリエイティブを見える化・仕組み化することで、センスに頼らない再現性のある運用を確立しようというのが我々の考え方です。もちろん、モデルに基づいて検討しているとはいえ、あくまで仮説ですから検証は必要。実際に運用する際にはABテストを行い、本当に改善になっているのかを数字で判断しなければなりません。
KARTE Blockのようなツールを使えば、専門知識がなくともサイト編集やテスト設計が可能です。仮説と検証を繰り返しながら「心を動かす」PDCAサイクルを回していくのが、プレシジョンマーケティングのメソッドです。