【広告クリエイティブの細かいところ。認知科学を使ったCVR・CPA改善】〜その2〜動機づけのモデル化と、定量的なデザイン
Web広告において重要なことは、広告クリエイティブを通じて「動機づけ」を行い、「意欲」を刺激し、最終的に「購入意思」に繋げることです。
当社はこの「動機づけ」を効果的に行うため【動機づけ設計モデル】を開発しました。
このモデルでは、クリエイティブの要素を分類し、動機づけの「方法」と「強度(バランス)」を定量的にデザインしています。
本記事では、このモデルとその適用方法について解説します。
動機づけ設計モデルとは?
当社で活用している【動機づけ設計モデル】は、心理学者フレデリック・ハーズバーグの二要因理論(モチベーションの上昇と低下を「動機付け要因」と「衛生要因」で説明する理論:wikipediaより)を基にしており、広告クリエイティブの文脈に対してUSP(衛生要因:外的要素)とESP(動機づけ要因:内的要素)に適応しました。
具体的な運用方法としては、広告クリエイティブにおけるUSPとESPを特定し、動機づけ要因の定量的分析を行います。
その後、質と量を調整しながら、最適なクリエイティブ戦略を導き出すことが目的です。このアプローチにより、効果的な動機づけが可能になります。
またその結果、顧客が商品やサービスを選択する際の「動機づけ要因」に重点を置くことができ、購買行動に至るまでの心理的プロセスを理解しやすくなります。
あわせて、このモデルを使うことで、どのクリエイティブ要素が購入意欲に直接的な影響を与えるのか、またどのようにそれらを組み合わせるべきかの洞察を得ることが可能です。
これにより、マーケティング活動の効果を最大化するための具体的な指針を提供します。
安心だけでは満足できず、満足だけでは不安が生じる
このモデルでは、広告クリエイティブが引き起こす心理的影響について、USPを「安心」とし、ESPを「満足」と定義し、これら「安心」と「満足」の両方に焦点を当てることで、消費者の「動機」を喚起できると私たちは考えています。
また、ESP、すなわち「満足」に関しては、四つの象限(満足/不満足、目的思考/問題回避)を用いて、その「方向性」と「強度」を設計できるように体系化しています。
このアプローチにより、広告の心理的効果をより精緻に理解し、効果的なクリエイティブ戦略を展開することが可能になります。
USP(衛生要因:外的な要因)について
USPは「他社にはない独自の価値」として位置づけていますが、これは実質的に「プロダクト情報」、つまり「有って当たり前」のものと捉えられます。
そのため、この要素が競合他社に劣る場合は消費者に「不安」を与え、一定の基準を満たしていれば「安心」を提供します。
あわせて、訴求の観点から見れば、USPは「プラスマイナスゼロ」という性質を持つ要素であると言えます。
これは、USPが基本的な期待値を満たすことで価値を生むが、それ自体では顕著な差別化要因にはなりにくいことを意味します。
ESP(動機づけ要因:内的な要因)について
ESPは「感情やイメージに基づく情緒的なブランド価値」として位置づけており、これを簡潔に表現すると、購入後に消費者が得る価値、すなわち一般的に言う「ベネフィット」に相当します。
さらに、クリエイティブを通じて「どのような感情を呼び起こしたいか?」という点を、4象限(満足/不満足、目的思考/問題回避)内の①から④の範囲で具体的に設計します。
このアプローチにより、広告が消費者の感情やイメージにどのように作用するかを詳細に検討し、より効果的なメッセージングを可能にします。
リスティング広告における分析・改善例
ここからは、具体的な利用方法を説明します。
例として、リスティング広告のテキストを動機づけ設計モデルに基づいてラベリング(分析・改善)する過程をご紹介します。
このアプローチにより、どのようにして広告テキストが消費者の動機づけに影響を及ぼすかを理解し、その効果を最大化するための具体的な手法を学ぶことができます。
この例では、左側に提示された内容が既存のクリエイティブ(分析例)を表し、右側に示された内容が新たに追加されたクリエイティブ(改善例)になります。
各クリエイティブの下部にある黄色い帯(USP:ESP)はそのバランスを示しており、USPとESPの比率を視覚的に表現しています。
分析例(左側)ではUSPが優勢でESPが少ないため、改善例(右側)ではESPを増やし、それに伴いUSPの割合を減らしてバランスを取っています。
このような調整により、クリエイティブの効果を向上させることを目指していきます。
動機づけ設計モデルは全クリエイティブへ対応可能
今回は、クリエイティブへのラベリング(分析・改善)の詳細な意図については、時間の都合上(詳細な説明が必要なため)触れませんが、以下の画像で示すように、この方法はバナー広告やランディングページ(LP)にも適用可能です。
動機づけ設計モデルを競合他社分析で使う
広告クリエイティブの役割には「競合他社に勝つ」という重要な命題が存在します。
ターゲットユーザーが競合他社のクリエイティブも視野に入れ、比較検討していることを考慮すると、自社のクリエイティブを動機づけ設計モデルを用いて競合と比較分析することが重要です。
さらに、競合他社のクリエイティブがどのようなコンテクストで動機づけや意思決定を促進しているのかを理解し、その有効な要素を自社クリエイティブに取り入れることも可能になります。
A/Bテストのバリエーションを増やす
競合他社の動機づけ手法を分析し、それを参考にして自社のクリエイティブパターンを増やすことができます。
さらに、現在自社が活用していない動機づけ設計モデルの要素を取り入れることで、新しいクリエイティブパターンを創出し、「似たような」クリエイティブの大量生産を避け、より多角的な動機づけアプローチを実現することが可能になります。
このアプローチにより、広告の多様性を維持しつつ、消費者の関心を惹きつける新しい方法が可能となります。
あわせて、ロジカルな運用であり、デザインを定量的に捉え、それに基づいて改善を行う手法は、広告戦略において非常に有効です。
この方法を採用することで、より効果的かつ効率的な広告の創出が可能となり、マーケティング活動全体の強化に寄与します。
まとめ
今回紹介した動機づけ設計モデルの重要性についてご理解いただけたかと思います。最後に、このモデルを活用した改善プロセスを簡潔にまとめますので、ぜひ参考にしてみてください。
自社のクリエイティブ要素が購入意欲にどのように影響を与えるかを分析し、それらの要素をどのように組み合わせるべきかを洞察します。
競合他社のクリエイティブ要素が購買意欲にどのように作用しているかを理解し、それに基づいて競合に勝るクリエイティブをデザインします。
クリエイティブの成果を判断するためにA/Bテストを実施し、優れたクリエイティブ(勝ちクリエイティブ)を特定します。この勝ちクリエイティブにおける動機づけ設計モデルの組み合わせが勝ちパターンとなり、他のサービスや異なるターゲットに対しても応用可能です。
※最後に1つ宣伝させてください
今回ご紹介した動機づけ設計モデル以外にも、当社は広告運用に特化した5種類の認知科学モデルを保有しています。
さらに、これらのモデルを活用してランディングページ(LP)を改善するサービス「アジャイルLPO」も提供しております。
ご興味のある方は、以下のリンクから詳細をご確認いただけます。
アジャイルLPO:https://www.agile-lpo.com/
このサービスは、最新の認知科学に基づいたアプローチで、LPの効果を最大化することを目指しています。