【広告クリエイティブの細かいところ。認知科学を使ったCVR・CPA改善】〜その4〜広告コピーで心を動かす
少々前の話ですが、ある旅行代理店のメールマガジンで、クライアントが作った件名(コントロール)と認知科学のVAKモデルを用いた改良版(リライト版)の件名でA/Bテストを実施しました。
その結果、コントロールとの対比でリライト版の開封率が130%UP、CVRが120%UP、さらに顧客単価も2倍近くに迫る実績が出ました。
そのため今回は、リライトに使ったVAKモデルと、リライトをする際に考えた戦略を振り返り、心を動かすコピーライティングに役立ててもらえればと思います。
VAKモデルとは?
VAKモデルは、人が情報を学習し処理する方法を理解するフレームワークです。このモデルは、人間が外界から情報を得る際に感覚(五感)を通じて脳へ情報が伝達されることを前提とし、感覚を三つの主要なカテゴリーに分類しています。
視覚(Visual): 視覚的な要素。色、形、視覚的なイメージを使って情報を理解する方法。
聴覚(Auditory): 聴覚的な情報。話し言葉や音、リズムを通じて情報を理解する方法。また商品名などの固有名詞、法則性や論理的な情報も聴覚を使った情報処理になる。
体感覚(Kinesthetic): 体の動きや触感、感情を使って情報を理解する方法。五感でいう身体感覚、味覚、臭覚も体感覚に含まれる。
※ 「VAK」は、Visual(視覚)、Auditory(聴覚)、Kinesthetic(体感覚)の各単語の頭文字から名付けられた略称です。
またVAKモデルは、神経言語プログラミング(NLP)という実践心理学分野で用いられる概念です。このモデルを通じて、個々人の学習スタイルやコミュニケーションの傾向を理解し、それに基づいて効果的なコミュニケーション戦略を策定することができます。
VAKは優位感覚で捉える
VAKモデルでの「優位感覚」は、個人が情報を取り入れ、処理する際に主に依存する感覚を指します。これは「右利きまたは左利き」という概念に似ており、多くの人が視覚(V)、聴覚(A)、体感覚(K)のうちのどれか一つを主な感覚として持っているとされます。しかし、右利きの人が左手も使うように、優位感覚以外の感覚も情報処理に活用される点は重要です。
VAKを広告コピーに活用する、3つの思考
私がVAKモデルを広告コピーで利用する際、以下3つのことを念頭においてます。
文字構成を考える。原文(リライト前)のVAK要素は何か?
ペルソナを考慮する。ペルソナの優位感覚は何か?
ペルソナの既知情報を考慮する。テキストから何を呼び起こすか?
この3つについて、冒頭でお伝えしたメルマガ件名を例にあげながら説明します。
1.文字構成を考える。原文(リライト前)のVAK要素は何か?
まず、クライアントが作った件名(コントロール)は以下でした。
この内容をVAKモデルを使い要素分解すると以下のようになります。
① 【まだ間に合う!】=A:時間を意識させる訴求
② GWはまだまだおトクです!=A:時間を意識させる訴求
③ リゾートホテル宿泊券や3万円分の旅行券など=A:商品(景品)の抽象的な表現
④ 豪華商品があたる=V:商品(景品)を視覚的(華やかである)と表現
⑤ キャンペーン実施中=A:期間限定のアプローチであることを訴求
またVAK要素のみで並べるとAAAVAとなり、A(聴覚)が多いこと、K(体感覚)がないことがわかります。
2.ペルソナを考慮する。ペルソナの優位感覚は何か?
もし今回のメールマガジンのターゲットが聴覚優位(A)の人々であれば、その内容は彼らにとって非常に理解しやすく響くものとなるでしょう。ただし、わかりやすく伝わる文章が必ずしも良い成果をもたらすとは限らないことに注意が必要です。特に、視覚優位(V)や体感覚優位(K)の人にとっては、同じ文章がそれほど魅力的に感じられない可能性があります。そのため、VAKの全感覚を活用し、五感を刺激するようなコピーを作成する方が効果的です。
3.ペルソナの既知情報を考慮する。テキストから何を呼び起こすか?
メルマガや広告バナーのタイトルでは、利用可能な文字数に制限があるため、伝えたい内容を簡潔にする必要があります。この制限の中で、読者が文字情報から芋づる式に関連するイメージや感情を想起させることが重要です。つまり、わずかな文字情報を使って読者の記憶や感情に連鎖的にアピールすることが効果的です。
リライト版の件名を解説
お伝えした3つの思考を使いリライトした件名が以下です。
この件名がコントロールとの対比で開封率が130%UP、CVRが120%UP、さらに顧客単価も2倍近くに迫る実績が出ました。
またどのようにして完成させたかについて、3つの思考で解説します。
1.文字構成を考える。原文(リライト前)のVAK要素は何か?
①【GWどこへ行く?】=K:行動を想起させる
②まだ間に合う=A:時間を意識させる訴求
③最高のGW!=K:感情的な訴求
④おトクがたくさん=V:視覚的(たくさん)訴求
⑤思い出旅行=K:旅行で得られる体験価値を意識させる
⑥&豪華商品も当たる!?=V:商品(景品)を視覚的(華やかである)と表現
⑦リゾートホテル宿泊券や旅行券も!=A:商品(景品)の抽象的な表現
またVAK要素のみで並べるとKAKVKVAとなり、VAK全ての感覚を使っていることがわかります。
2.ペルソナを考慮する。ペルソナの優位感覚は何か?
旅行代理店のメルマガ購読者のペルソナを考慮すると、彼らはアウトドア志向であり、旅行先で「遊ぶ」「歴史を学ぶ」「食事を楽しむ」といった体験を重視していると推測されます。したがって、リライト版のコンテンツは、体感覚(K)を中心に据え、読者の期待を高めるような内容しました。
3.ペルソナの既知情報を考慮する。テキストから何を呼び起こすか?
先に述べたように、体感覚(K)を中心にした訴求構成を考える際、重要なのは旅行時の擬似体験とゴールデンウィークの過ごし方に対する期待値の高め方です。さらに、ターゲットが家庭の主であり決済者である場合、多くのメリットを提示することが望ましいです。そのため、訴求⑥と⑦では「も」を用いて【スタック(積み上げ)型訴求】を採用し、感覚的な価値をより大きく感じられるよう工夫しました。
まとめ
今回の内容はいかがだったでしょうか?
またこの記事を書くにあたり、ChatGPTのGPTモデルを使用してプロセスの自動化を試みましたが、VAKの考慮、文字数の調整、ペルソナに対する深い考察、媒体の特性への対応など、様々なパラメータの設定が複雑であり、一旦断念しました。
加えて、広告業界では競合他社との比較を行うユーザーが多く、そのためには他社のコピーを上回る優れた訴求が必要であるため、現時点では、ChatGPTだけで心を動かすコピーを作成するのはまだ困難な状況ですね。
また当社では、今回ご紹介したVAKモデル使いランディングページ(LP)を改善するサービス「アジャイルLPO」も提供しております。
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