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「運用型広告の予算配分、どう決める?」へのアンサー【デジマのあれこれ Vol.6】

こんにちは! 企業向けにデジタルマーケティングの支援を行う、株式会社プレシジョンマーケティングです。
専門用語が多く、新しい技術やツールが次々と登場するデジマの世界。【デジマのあれこれ】では、最新技術を分かりやすく紹介し、デジタルマーケティングの力を最大限活用していただくことを目指します。

Vol.6のテーマは「運用型広告の予算配分」

GDNやYDN、リスティングに各種SNSなど、さまざまな種類があるデジタル広告。それぞれリーチできるユーザーの特性やボリューム、目に触れるシチュエーションが違うため、ほとんどの広告主は複数の媒体を組み合わせて利用されているのではないでしょうか?

そんなとき迷ってしまいがちなのが、各媒体(あるいは、1つの媒体内の各キャンペーン)への予算配分です。限られた予算で最大の成果を得るための配分は、ケースバイケース。実際のところは試してみないと分かりません。とはいえ、勘や当てずっぽうで配分して大外しするのももったいないことです。そこで今回は、適切な予算配分を見つけるための、「定石」をご紹介します。


よくある勘違い:「CPAの低い媒体に予算を寄せる」と、損をするかも?

本題に入る前に、よくある失敗をご紹介します。「予算配分なんてカンタンでしょ?」と思っている方も、こんなミスをしてしまっているかもしれませんよ。

その失敗とは、「CPAの高い媒体の予算を削減してCPAの低い媒体に再配分する」、言い換えれば「CPAが均一になるようにする」です。全体のCPA(Cost Per Action:顧客獲得単価)が小さい方がいいのは当然なのですが、そこに至るまでの調整の指標にCPAを用いるのは悪手です。それがベストになることもありますが、むしろ全体の獲得数が減少する可能性もあります。
下記の例ではCPAの低い媒体Aに予算を寄せた結果、全体の獲得数が減少しCPAが上がってしまっています。CPAの低い媒体に予算を寄せるだけの運用だとこのような事態に陥ってしまう可能性があります。

予算調整の例
媒体Bから媒体Aに予算を寄せた結果CPAが悪化

CPAはあくまでも”過去”の実績の平均値であって、予算を増やした時にその単価でCVが獲得できるという”未来”を約束してくれるわけではないことがわかります。

それではどのような考えで予算配分をするべきなのでしょうか? 結論からお伝えすると、「CPAを均一にするのではなく、コストに対するCVの変化率を均一にする」です。これだけでは分かりにくいかと思いますので、詳しくご説明しますね。


前提となる条件:「コストをかけるほど、CV効率が落ちていく」

「コストに対するCVの変化率を均一にする」という考え方でコスト配分が最適化できるのは、ある条件が成り立つ場合だけです。その条件とは一つの媒体・施策にコストをかければかけるほどCVが獲得しにくくなる(逓減していく)ことです。

コストとCVの関係性イメージ
コストとCVの関係性のイメージ

多くの場合、この条件が成り立ちます。コストが少ない=配信先が少数のときは、コンバージョンしやすそうな人に絞った配信が可能ですが、コストが大きい=配信ボリュームが大きくなるにつれ、コンバージョン可能性が低い人にまで広げて配信せざるを得ないからです。そうならないレアケースもあるかもしれませんが、その議論をはじめると話が逸れてしまうので、今回は成り立つ前提で話を進めます。

考え方の詳細:グラフの傾きに注目

先程示した例ではCPAの高い媒体Aから媒体Bに予算を再配分した結果、全体の獲得数が減少しCPAが悪化しました。例で挙げた媒体Aと媒体Bについて、コストとCVの関係を推測※したグラフは以下です。

※実際にCV数が分かっているのは、2つのコストパターンのときのみですので、その他のコストパターンでの線の動きはあくまで推測です。

コストとCVの関係性を推測したグラフ(媒体A、媒体B)

図を見ると、媒体Aはコスト10万円(CV100)付近からグラフの傾きが緩やかになり、コスト30万円(CV120)以降はほぼ横ばいになっています。CPAが低いものの獲得数が飽和しており、これ以上コストをかけても獲得数が伸びにくくなっています。

一方、媒体Bはコスト10万円時点でも、コスト30万円(CV150)時点でも、グラフの傾きが大きく変わりません。つまり、コストを上げてもパフォーマンスが落ちにくいのです。コストが小さいうちは媒体AよりCPAが高いものの、途中で逆転しています。グラフを重ね合わせてみると、22~23万円ほどで入れ替わります。

媒体Aと媒体Bのグラフを重ね合わせた図

さて、ここで「コストに対するCVの変化率を均一にする」に立ち返りましょう。「コストに対するCVの変化率」とは、予算を増減させた時に、CV数がどれくらい増減するかの割合です。数学が得意な方には、グラフの傾きですと言ったほうが伝わりやすいでしょうか。

各媒体でCVの変化率が均一な状態、つまりグラフの傾きが同じになる状態こそが、理論上最適な予算配分であると言えます。

最後に

ここまで読んで、コストとCVの関係のグラフを描くには、最低2パターンのコストで運用してみる必要があるとお気づきになった方もいるかもしれません。そう、この手法は実際にコストをかけて運用してみないと使えません。また、実際には例に出したグラフのように素直な動きをしてくれるとは限らず、2パターンで推測しきれないことも多々あります。実際の広告運用ではコストとCVの関係性を正確に把握することは難しいです。

ただ、だからと言ってこの考え方が無駄というわけではありません。正確な関係性がわからない中でもコストとCVの変化率を考えることで、極端に効率の悪い運用をしてしまうリスクを減らせるからです。

これらの考え方を知らないと、冒頭で紹介した勘違いをもとにCPAが低いだけで伸び余地がない媒体に予算をかけすぎてしまったり、反対に伸び余地のある媒体に十分な予算をかけられなかったりする恐れがあります。
今までCPAベースで予算調整を行っていた方は、この記事の考え方をもとに予算配分を見直してはいかがでしょうか?


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