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【広告クリエイティブの細かいところ。認知科学を使ったCVR・CPA改善】〜その8〜

人の心を動かすコピーには必ず理由があり、その仕組みが分かれば、より効果的なコピーを作ることができます。
そこで今回は、最近のAI技術で注目されている「マルチモーダル」という概念を用いて考察していきます


マルチモーダルとは?

まず、「モーダル」とは、情報を伝えるための一つの手段や方法のことです。例えば、文字だけで情報を伝える方法や、音声だけでメッセージを伝える方法などがこれに当たります。
次に、「マルチモーダル」とは、複数の手段を組み合わせて情報を伝えることを指します。つまり、文字だけでなく、画像や音声、映像など、複数の方法を使ってメッセージを伝えるということです。
例えば、人間が本を読むとき、文字情報だけでなく、図やイラスト、色彩、ページのレイアウトなど、さまざまな要素を一緒に見て内容を理解します。このように、視覚、聴覚、触覚などの複数の感覚を使って情報を総合的に捉えることをマルチモーダルと言います。

広告クリエイティブとマルチモーダル

広告クリエイティブは、すでにマルチモーダルで作られています。
例えば、テレビCMを思い浮かべてください。
映像、音楽、ナレーション、テキストなどが一緒に使われて、私たちの視覚や聴覚を通じて情報が伝えられ、これにより、商品の魅力やメッセージがより効果的に伝わり、記憶に残りやすくなります。
また、雑誌広告でも、カラフルな写真、キャッチーなコピー、洗練されたレイアウトが組み合わさって、私たちの目を引きつけます。
これもまた、異なる情報を組み合わせて伝えるマルチモーダルなアプローチです。
このように、広告クリエイティブは、すでに視覚、聴覚、文字情報などの異なる要素を組み合わせることで、私たちに強い印象を与えています。

広告コピーにおけるマルチモーダル

広告コピーをマルチモーダルで作ることの重要性です。

広告コピーでは、以前お伝えしたVAKモデルを使い、視覚、聴覚、体感覚を組み合わせてユーザーの感覚を刺激し、イメージを膨らませることが効果的です。

以下のコピー例をつかって解説します。

コピー例1:しっとりしなやかな仕上がりが特徴です

この文章には、視覚(V)、聴覚(A)、体感覚(K)の要素が含まれています。

  1. しっとり(K)

  2. しなやか(K)

  3. 仕上がり(V)

  4. 特徴(A)

このコピーでは、視覚的な「仕上がり」、聴覚的な「特徴」、体感覚的な「しっとり」「しなやか」を組み合わせることで、より豊かな表現が生まれています。また、「し」という音から始まる単語を連続して使い、リズミカルに聴覚を刺激することで、覚えやすい印象を与えています。このように、広告コピーにおいて複数の感覚を組み合わせると、より多くのモーダルを刺激し、ユーザーに強く印象づけることができます。

ダブルミーニングとモーダルチャネル

広告コピーについてもう少し深掘りしていきましょう。

広告コピーの技法として「ダブルミーニング」が効果的であること多くの人が知る事実です。

この「ダブルミーニング」とは、1つの言葉やフレーズに複数の意味を持たせる手法で、これにより、コピーに深みや意外性が加わり、読者の関心を引くことができます。

以下が参考例です。

コピー例2:未来へ羽ばたく

  • 第一の意味(直接的な意味): 鳥が翼を広げて空を飛ぶ様子。

  • 第二の意味(比喩的な意味): 人や企業が新しい挑戦を始めること。

このフレーズは、鳥が羽ばたく様子を視覚的にイメージさせると同時に、聴覚的には力強さを感じさせ、体感覚的には自由や解放感を与えます。

このように、第一の意味(直接的な意味) 第二の意味(比喩的な意味)を組み合わせることがダブルミーニングとなります。

さらにモーダルチャネルを意識したコピーは以下のようなものです。

コピー例3:未来へ羽ばたく、新たな翼を手に入れよう


ダブルミーニング

  • 直接的な意味: 鳥や飛行機が翼を広げて空を飛ぶ様子。

  • 比喩的な意味: 新しいスキルやチャンスを得て、成長や挑戦を始めること。

モーダルチャネル

  • 視覚(V): 「羽ばたく」「翼」という言葉が、空を飛ぶ鳥や飛行機のイメージを思い起こさせます。明るい未来への希望を視覚的に感じさせます。

  • 聴覚(A): 「羽ばたく」や「新たな」という言葉が、力強く前進する音や、新しい始まりのワクワク感を連想させます。

  • 体感覚(K): 「未来へ羽ばたく」や「翼を手に入れよう」というフレーズが、自由な感覚や、風を切る爽快感を体感的に感じさせます。

良いコピーは「具体」と「抽象」の使い分け

最終的に、優れた広告コピーを作成するためには、具体的な表現と抽象的な表現をバランスよく使い分けることが重要です。
具体的な表現は読者に明確なイメージを提供し、抽象的な表現は読者の想像力を刺激してメッセージに深みを与えます。
そのため、マルチモーダルとダブルミーニングを活用しながら、このバランスを保つことで、読者の心に強く残るコピーを作ることができるようになります。